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  • 中野 裕弓

続・世界の平和って?

2001年3月7日に自宅のパソコンに、世界銀行の元同僚から送られてきた1通のメール。
そのメールを読んだとき、私は手のひらに地球儀が乗ったような愛しい気持ちになりました。

それがその後、日本で大きなブームになったベストセラー「世界がもしも100人の村だったら」の始まりでした。

前回ご紹介した「100人の村と考える種」(裕弓著)の後書きはこんな文でした。

ー部分引用ー

「もしこのように(100人の村での数字に表わされた)縮小された全体図から私たちの世界を見るなら、

Acceptance アクセプタンス
相手をあるがままに受け入れること、
Understanding アンダースタンディング
自分と違う人を理解すること、
Education エジュケーション
世界の事実を知るための教育が、いかに必要かは火を見るより明らかです」

さらっと書いてある文章ですが、この3つは今の時代を新しい世界に移行させていくためにも欠かせないものだと思います。

●アクセプタンス
相手を尊重し、相手をあるがまま受け入れること。

今ではダイバーシティー、多様性などと表されています。
これまでは力、権力、経済力の勝ったものがそうでないものを組み伏せてきた歴史があります。
強いものにとって住みやすい世界を構築するために、自分さえ良ければ良いという利己的な思いで世界地図が作られていました。

組み伏せられたものは、被害者意識に取り込まれ不満が溜まって、いつか相手に仕返しをしようと虎視眈々とそのチャンスを狙い、それが講じるとテロにまで発展したりするのです。

自分と相手の利害関係から、誰かが1人勝ちをする、誰が泣きを見るというような勝者と敗者を分断する偏った、かつ貧しい問題解決の仕方しかありませんでした。

その後win win(お互いに利益がある、双方にとって満足な)の考え方が紹介されました。
みんなにとってプラスになるような問題の解決法です。

関わった人が皆同じテーブルに集いお互いの意見を交換し、解決策を考える。
でも、今はそのテーブルにもつけないような弱者、部外者にとってもプラスになる方向に向けて討議をする必要があるのです。

つまり宇宙船地球号の乗組員全員にとって有益な問題の解決策をみんなで考える時期が来ています。

●アンダースタンディング
自分と違う相手を理解しようとすること。

人は変化に弱い生き物です。
自分の慣れ親しんだ環境、予測可能な状況ならば安心ですが、馴染みのない環境や自分と異質な相手に向き合うとき、そこには変化がもたらされます。
それらを恐怖に思うあまり、それを丸ごと否定して遠ざけるか退治したほうが安心だと思ってしまうのですね。

暴力が犯罪の根底にあるのはそれを起こす人の中にある恐れという負のエネルギー。

恐れと不安は屈折して、暴力やテロに形を変えて外に出てしまうのです。

自分と違う考えを持った相手、今までとはまるで違う環境、習慣などに直面したときは?

自分を主張して張り合う前に、まずはオープンマインドで相手を理解しようと歩み寄る。
その寛容な心と態度があればそこにコミュニケーションが始まります。

そのとき、自分の独善的世界の領域は広げられ、相手の領域と部分融合し、それぞれの良いところを合わせて、もっと新しい進化した解決策が生まれるのです。

そこではI(私)とYou(あなた)が融合してWe(私たち)となるのです。

●エデュケーション
世界の事実を知るための教育。

単に教育と訳せば良いのですが、前述の2つを踏まえて、私は世界の事実を知るための教育。
つまり「世界は多様性に満ちていることを教え、多様性に満ちているからこそこの世は素晴らしいと教える教育」と理解しました。

世界に何が起こっているか、事実を知ることは大事です。
でももっと大事なのは、その数字に表された事実を自分の中でどう理解し、よりよき変革のための行動につなげていくかという一人ひとりの実践のあり方なのです。

多様性に強くなることは新しい世界観には不可欠です。
今求められている新しい世界観、それは一言で言うなら「多様性の中に生まれる調和」です。

自然界を見ると、間違いなく多様性に満ち溢れています。
そして、それがそのとき必要な形で共存し、時代とともに変化していくのです。

私たちはそれぞれの違いを認識し、お互いにリスペクトし合いながらそれを乗り越えていくという課題に直面しているのですね。

世界情勢は他人事、
ではなくて自分の周りを見回し、同じようなことが起きていないか、手の届くそこに対して、一人ひとりが何かできないか、これこそ頭の体操、自分の可能性へのチャレンジです。

2025.3.25
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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