• 中野 裕弓

人間関係構築

アメリカに住んでいたときに、終末ケアのボランティアのトレーニングを受けました。

人生の最期を迎えた方々と大切な時間を共に過ごす、そのために必要なこと、心構えを学びました。

その活動を通して何人かの方々にご縁をいただき、人生に大切なことをいろいろ学びました。

今までの人生がどういうものであったにしろ、年齢がいくつであれ、地球時間の最後に、皆さんがおっしゃるのはただ1つ 
「人と人とのつながりの大切さ」でした。

クライアントさんの状況は様々でしたが、第三者の私という存在に心を許して話しておきたいことをいろいろ語ってくださいました。

はじめの頃は、
Why me? なんで私がこういう目に合うの?とか、
Why now? なんでこの時期にこうなるのといった現状を受け入れられない思いや憤りもありました。

私の人生、もうちょっとこうすればよかったとか、あそこで選択を誤ったとか後ろ向きの話もありましたが私たちは善意の第三者としてどんな話にも静かに耳を傾けました。

何度か通って交流を続けるうちにお話の内容は変わっていきました。

残りの時間を人生で出会った人との人間関係を修復するために動かれる方も多かったのです。

例えば疎遠になってしまった家族と再び連絡を取って話をしたい、昔の友達ともう一度楽しい昔話をしたい、あの時のお礼を言いたい、あのときのことを謝りたい…。

アメリカで出会った方に、ベトナム戦争に従軍したシニアの退役軍人さんがいました。
その方は以前、親の遺産相続問題で揉めてすっかり疎遠になってしまった遠くに住んでいる兄弟がいました。
その人ともう一度話がしたいという希望をお持ちでした。

病室で奥様がご兄弟に電話を繋ぎました。
お兄さんの深刻な状態を知らなかったご兄弟はびっくりして言葉も出ませんでした。
でも、もう声が出せなくなっていたお兄さんの状況を聞いて電話の向こうで話しかけてくれました。

お兄さんは話をすることも難しかったのですが、兄弟の声を聞いただけで表情が緩み、涙を流されました。
手にした受話器が確実に相手とつながっているという感覚を味わっていらっしゃるようでした。

やがて二人とも沈黙となりかなりの時間が過ぎました。
しばらくすると合図でもういいとのこと。
相手のご兄弟にも伝えて電話が切れました。

特に何をしゃべったと言うわけではありませんが、生きてる間に相手とつながったということをしっかり味わった、そういう満足なお顔をされていたようでした。

その数日後に彼は天国に旅立ちましたが、奥様によるとその電話以降とても穏やかで満足した顔していたとのことでした。

疎遠になった人と今一度つながる、しばらく会っていない友達にお礼を言いたい、あるいは一緒に体験したことをもう一度思い出して共有したいとかいろいろな思いが交錯するのだと思います。

残された時間を意識することになったとき、皆さんが望んだこと、それは… .
リレーションシップビルディング、人間関係を再び構築することでした。

とても勇気のあることかもしれません。
必ずしも良い思い出ばかりじゃないのかもしれませんがだからこそ声を聞いて思いを伝えておきたかったという気持ちが伝わってきました。

人生の旅の最後に私たちのような立場の人にお話しされることを聞き、私も人生の大切なことを皆さんに教えてもらったと感謝の気持ちがいっぱいです。

人生の成功とは、お金を作ることでもステータスにこだわることでも、優雅な暮らしをすることでもなく、良い人間関係を楽しむこと。

それができたら人生は素晴らしいと満足に感じるものだと思いました。
心から満たされた人生とは、豊かな人間関係なのですね。

81億人が暮らすこの地球で、せっかく出会えた人と良い人間関係が愉しめたら素晴らしいですよね。
日ごろから人間関係を大切にするということを、私は生き方の真ん中にしつらえることを教えてもらいました。

2026.1.30
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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