• 中野 裕弓

SARA モデル

人生には時折、晴天の霹靂、ありえないこと、予想だにしていなかったことが起きます。

そういう事態に遭遇したとき、人々の心はどういう風に推移していくでしょうか?

アメリカにいた時に、余命を告知された人のケアについて学ぶ機会があり、終末ケアのボランティアをしていました。
そこで学んだのは“SARAモデル”でした。
当事者の気持ちの推移をS、A、R、Aで始まる英単語で表していました。

S・Shock
びっくりするようなことが起きました。
最初に来るのがショック状態です。
あまりの驚きに頭が真っ白になり、思考が止まり、髪の毛が一晩で真っ白になったなんて話も聞いたことがあります。

A・Anger アンガー 
最初のショックが少し収まると体の中から怒りが出てきます。
「なんで私が?」
「なんで今なの?」
答えの出ない憤りか溢れて出してきます。
イライラして怒りの感情を周りの人やものに手当たり次第ぶつけます。

R・Rejection リジェクション
次に来るのは周りの出来事全てに対する拒否や反発。
治療を拒絶したり、周りからのサポートを断ったり、無気力になって心を閉ざしたりします。
中にはこういうことが起こったこと自体をないものにしようと無視してしまうこともあります。

A・ Acceptance アクセプタンス
気持ちの揺れ、アップダウンを繰り返し、行ったり来たりした後、ある時点で「これも私の人生!」と自分に訪れた現実を穏やかに受け入れようという段階がきます。

決して希望を失っているわけではなく、運命を受け入れてその人らしく残された時間を過ごそうとする状態で私は“明るいあきらめ”と言い換えています。
そうなると、吹っ切れたように笑顔も出てくる人もいます。


〜〜〜

ショックで始まった心の動きは、途中葛藤を繰り返し行きつ戻りつしながらだんだん落ち着いてくるのですね。

しかし
S → A → R → Aと順番に行くとは限りません。
怒りを発散させたかと思うと、急にショックで無気力になってみたり、全てを拒否して殻にこもっていたのに、突如、怒りを外に爆発させたり…

でもいろいろあっても、その人の絶妙のタイミングで 最後の「これも私の人生」と穏やかな気持ちに落ち着いてきます。

近くで支える人たちはこういう心の変遷があるということを知っているだけでも落ち着きます。

例えば、余命を宣告された方の病室にお見舞いに行ったら、涙を流して喜んで手をさすってくれと言っていたと思ったら、次にお見舞いに行った時は顔を見るなり「あなたに私の気持ちなんてわかるわけない、帰って!」なんて拒否されたり。

SARAモデルを知らないと、自分が前回何か悪いこと言ってしまったんじゃないかと落ち込むものですが、今日はAの怒りの心境なのかもと素直に事態を受け入れることができます。

●沈黙の存在の大切さ

「言葉ではなく、静かに寄り添うことそのものがケアになる」

大変な思いをしている相手にどんな言葉をかけていいかわからないときありますよね。

お見舞いに「元気出して」は禁物なのは、皆さんご存知だと思いますが、相手がどのムードにいるかわからないので、とにかく「静かに共にいること」その場を共有する沈黙の存在であることも大切です。

「励ましの言葉を探すより、静かに共にいることが大切」

〜〜〜

実は、このSARAモデル、
余命を告知された場合だけではありません。

ライフチェンジングイベント、
人生において、全てをリセットしなければいけないときにも当てはまります。

例えば、会社でリストラに遭った方々も、同じような心の変遷を辿ります。

自分の不運を嘆いたり、上司や部下や会社に対しての怒りをぶつけたりする時もあるでしょう。
でもSARAモデルを知っていれば、いつか最後のA= 明るいあきらめに到達できると思うと、ちょっと落ち着きます。

最初のAから最後のAに行き着くために大いなる助っ人が2つあります。

・1つ目は、時の経過です。
時が経つとだんだん落ち着いてきて、自分の人生を見る視野も広がり、未来に向けて希望の光が見えてきたりします。

・2つ目は、本当に自分のことを思ってくれる心の友の存在です。
ただただそばにいてくれる、そういう存在がいかにありがたいことか。

私も以前、大病をしました。
その時にすべての日常生活が強制ストップしたわけなのですが、そのときも自分の心の変化に慌てずに、流れに身をまかせていられたのは、このSARAモデルを知っていたからだと思います。

お見舞いに来てくれた相手に気を遣って元気なふりをする必要もないし、自分の不遇を投げたり心配して夜が眠れなかったり、そんなときもいつかいいタイミングで、必ず最後のAまでたどり着けると思うと、ほっとしてよく眠れたものです。

このSARAモデルはアメリカの精神科医エリザベスキューブラーロスのご研究が元となっていると聞きました。
とてもわかりやすくて、いろんな時に応用できるとてもありがたい心理状況の理解の仕方だと思っています。

2026.5.29
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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