Language

メニューを閉じる
  • 中野 裕弓

心の声を聴く

私たちは時々、心の奥から響いてくる本音の声と周りの状況に合わせた分別や建前の声を混同してしまうことがあります。
他人によく思われたいとか、周りに波風を立てないように無難な生き方を選択し、自分の心の奥の本音を無視して生きることに慣れてしまってはいませんか?

私は常々直感とかひらめきを大切にしています。

先日、どうしたら心の奥の声を聴けますか?という質問をいただきました。
いつも自分の本音、心の奥の声が聞けたら、もっと自分らしい生き方をすることができると思いませんか。

そこで私が若い頃に取り入れた習慣についてお話ししてみます。

20歳の頃、私は初めての海外一人暮らしでロンドンにいました。
50年前のロンドンは日本から1人で出かける人たちがまだ少なかった頃で、孤独を感じ心細く思っていました。

そんな時、ロンドンのバッキンガム宮殿の近くにお住まいの恩師の知り合い、ローマン一家にお世話になりました。

毎週そのお宅にお呼ばれしてお食事をご一緒したのですが、その家に行くたびに、いつも心が穏やかになって、幸せな気分になることに気づきました。
帰る頃には、いつも心に安心感があるのです。

そこで私は聞いてみました。
「このお宅に伺うたびに、私の心が穏やかになって幸せな気持ちになるのですが、それはご家族の信条や宗教観か何かでしょうか?」

すると奥様のジルさん曰く「特に変わったことはしていないけれどでももしあるとしたら“クワイエットタイム”を取り入れているところかしら」と。

初めて聞きました。
クワイエットタイム(静寂の時間)って何でしょう?

「目を閉じて静かな時間を持ち、心の中に浮かんでくる思いを細大漏らさずノートに書いてみる。どんな小さな声も聞き逃さずにノートに書きつける、それだけよ」

その日ご夫妻は私に手のひらサイズの小さなノートをくださいました。
私はその後どこに行くにもそれを常に携行していました。

朝起きたとき、何か行動を始める前にベッドに座って目を閉じて静かな時間を持ちます。
その後、そのときに浮かんできたことを全てノートに書きつけてみるのです。

とはいえ、最初はまるで事務的な“TO DO リスト”(やらなきゃいけないリスト)でした。

例えば、郵便局に支払いしに行くとか、文房具を買う、銀行に行く、家族に手紙を書く、〇〇さんに連絡、などなど単なる日常の出来事の羅列でした。

はじめはそれで大丈夫です。
1日の間に時々その小さなノートを見直すと、そうだった、忘れてた、今日中にこれやってしまおうと便利なリマインド機能になりました。
それでも1日の終わりにはやらなければいけないことのリストがずいぶん片付いていて助かりました。

思ったことを書くということに慣れてくるとにときには脈絡もなく”〇〇さんに電話をかける”とか、隣の街のコーヒーショップに行ってみるとか、そんな思いが出てきました。
どんなこともノートに書いてみた以上は実行してみます。

それでびっくりすることがありました。

朝のクワイエットタイムで〇〇さんに電話をすると出た日。
特に用事はなかったけれど書いたのでその友達に午後になって電話をかけてみました。

そうしたら彼女はびっくりして「私が連絡したかったこと、なんでわかったの?」

彼女は数週間前にバッグをなくしてしまいそこにあった手帳も紛失してしまいました。
私に連絡をしたいと思っても、電話帳がないのでかけられなかったと。
連絡したいのにどうしようと悩んでいたところだったというわけです。

彼女は素直に私に聞きました。
「どうしてわかったの?あなたには霊感とか特別な力があるの?」
そんなわけでないのですが、朝のクワイエットタイムにひらめいただけなのです。
なんだか不思議な思いがしました。

もしかしたら心の声は私にそれを教えてくれたのかもしれない、今までだったらなんでこんなこと思いついちゃったんだろうって打ち消していたようなことまで拾う習慣ができていましたから。
その中にちっちゃくても心の奥がささやきかけた声があったのがわかったからです。

楽しくなりました。

お友達との待ち合わせてちょっと時間があるとき、静かな時間を持って出てくる思いを書きつけてみました。
午後お茶を飲んでいるときに、ふと思いついたことも書いてみました。
思いついただけで書かなければあっという間にその言葉は消えてしまいます。

「どんなに薄いインクでも、鮮やかな記憶より強い」という諺があるそうです。
ノートに書き付けてさえおけば、それは全く違う展開になるのですね。

私は若い頃からずっとこの習慣を続けていました。
そのうちに“心の声”ととても仲良くなりました。

出てきた心の声に対して正誤をさばいたり批判することなく、素直に全部受け取ってみたら、自分自身の深い部分との信頼関係がしっかりできました。

瞑想したいんだけど、どうやっていいかわからない、一人の静かな時間を持ちたくても、いつも忙しさにかまけてしまう…とか、今までできなかった人も小さなノートを1つ買って、自分の近くに置いておいて、心の静かなつぶやきを全て全て文字にしてみるのは楽しいことです。

クワイエットタイム、あなたの1日のルーティーンの中に加えてみたらいかがでしょう。

今まで気がつかなかった自分の本音がもっとわかりやすくなるかも。

これであなたの人生がもっとシンプルで生きやすくなるかもしれませんね。
グッドラック!

2025.9.25
Romi

SNSSHARE

この記事をシェアする

COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
続きを見る

19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

他のコラムニストを探す
中野 裕弓の記事
中野 裕弓の記事一覧へ
肌改善 リフティング認定