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  • 中野 裕弓

ロー・テク ハイ・ タッチ

Low Tech High Touch

この言葉、フロリダにあるディズニーワールドでの研修で初めて聞きました。

ご存知のように
“ハイテク”とは新しい時代に大きな影響を及ぼすような分野での高度の技術。
いわゆる先端技術のことです。

一方、ローテクとはハイテクの反対でシンプルで原始的な技術、対処法などのこと。

ディズニーワールドはあらゆるものがコンピュータやAIで制御されていて超ハイテクなまさに時代の先端を行くテーマパークです。

それなのにローテクとは??
と思いました。

それは

そのハイテク先端技術を駆使した現実をスタンダードだとすると、それを上回り高く評価されるのが
“ハイタッチ”
つまり人と人のふれ合いだというのです。

どんなにAIが進歩しても、それを使う人間同士に気持ちや心のふれあいがないならば、どんな技術も味気ないものです。
そのうちに、AIが人間を牛耳るのではないかと心配する人もいます。
でも私たちはどんな先端技術も上まわるソフトを持っています。
まごころで”ハイタッチ”を心がけていればそんな心配は要りません。

これは人工知能がますます大きな役割と働きをしてくれるこれからの世の中ではとても大切な考え方だと思います。

大切なのは
先端技術を上回る人間同士の心の触れ合い、ですね。

マニュアル

西洋からマニュアル文化が入ってきた最初の頃の話です。
従来の日本では仕事は「習うより慣れろ」という古くからの教え、慣習がありました。

師匠や先輩がやってることを見よう見まねで、技術だけでなく雰囲気もろとも受け入れ体験することでそれにふさわしい人となりも備わってきていたのかも知れません。

あるとき、マニュアルが日本の社会にやってきました。

そもそも

マニュアルとは、作業の手順や流れ、システムやツールの操作方法などを体系的にまとめたもの。
特にビジネスの場面で有効でさまざまな業務を円滑に遂行するために作られています。
事務的な処理の流れや基本的な業務知識、作業フローや仕事を進めるうえでの考え方など、さまざまな情報をまとめたものがマニュアルです。

箇条書きになっている手引き書でその通りにやっていくと、目的に到達できるというとても都合の良いものですよね。

社会がまだマニュアルに慣れていないごろ、こんな体験をしました。

旅先で仕事終了後、駅に近いビジネスホテルにチェックイン。
もう遅いのでフロントは静かでした。
女性スタッフが「私どものホテルではエコに関心を寄せております。ですので、お客様の必要なアメニティーはお部屋に設備されておりませんので、フロントでお渡しいたします」と流れるごとく説明してくれました。
続けて「歯ブラシ、ヘアブラシ、カミソリはご利用ですか?」

若いスタッフはマニュアル通り業務をこなしているという感じ。
私はちょっとしたいたずら心で「私もカミソリは必要ですか?」と頬に手を当ててみました。

スタッフさんはびっくりした顔で
「大変申し訳ございません。失礼いたしました。」

マニュアルには歯ブラシ、ヘアブラシ、カミソリと3点セットだったのですね、お客様にはマニュアル通りの対応をというのが徹底してきた頃の話です。
マニュアルという便利で機械的な手引きのことに心を奪われて、ハイタッチ、つまりお客様を見て個別対応することがまた追いつかなかったのかもしれませんね。

そういえばディズニーワールドの研修では、マニュアルについてこんな理解をしていました。
職種によって初期研修の日程は違います。
3日から3ヶ月位。
マニュアルも膨大な数だそうです。

研修が終わった時に指導していた先輩からのこの一言。
しびれました。

「今日まで研修お疲れさまでした。さてここで学んだ研修マニュアルはあなたの仕事の50%です。残りの50%はあなたの今までの体験、経験値、個性、あなたらしさを活かして、オリジナルのサービスを作っていってください」と。

マニュアルを仕事の100%の指針とするのか、50%に留めて、残りの50%はその人の今までの経験値、生き方、思いが出るようなオリジナルの接客ができたら、まさにハイタッチ、ですね。

2025.7.10
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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