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  • 中野 裕弓

再びSARAモデル

最近、周りでペットさんを看取る人の事例が重なりました。

それまで家族として共に生活してきたワンちゃんや猫ちゃん。
10年、15年、いやそれ以上家族の中にいたペットさんが目の前からいなくなるというのは、本当に寂しい悲しい辛いことですね。

猫を家族として迎えている私も、子猫からどんどん成長してきているその存在は私の生活の一部になっています。
しかしいつかは空猫に還っていく日もあると思うと切なくなりますね。

ペットロスで喪失感いっぱいの方に、少しでも心が癒えますように再びSARAモデルの話をしましょう。

私はワシントンD.C.にいたころ、ターミナルケア(終末ケア)のボランティア団体、フランシスセンターで喪失感や死を受け入れるまでのプロセスについて学ぶ機会がありました。

そこでは
「死と死にゆく過程」について、後世に残る素晴らしい研究を残されたエリザベス・キューブラー・ロス博士の教えがもとになっていました。

その人にとって今までと人生をガラッと変えてしまうような大きな出来事に直面したとき、人の気持ちがどんなふうに推移していくのかを4つの段階で表しています。

その4つのステージの頭文字をとって、SARA(サラ)モデルといっています。

S… Shock ショック

当たり前の日常が突然壊されたとき、頭が真っ白になります。
思考が働かなくなり何もできなくなります。

A… Anger 怒り

「なんでこんなことが起きるの」「なんで今なの?」「これは誰々のせいだ」と起こった事実を受け入れられず、なぜ自分がそういう目に合うのかという怒りを周囲に(あるいは自分自身に)向ける段階でもあります。

R… Rejection 拒否

このこと自体がフィクションで事実ではないと疑う段階でもあります。
あるいは全て無かったことにしようと自暴自棄になることも。
また、手を差し伸べてくれる人に対してサポートを拒否したり、すべてに対して否定的な態度をとるかもしれません。

A… Acceptance 受容

この4番目の段階を私は「明るいあきらめ」とも理解しています。
起こった出来事はもうやり直しができない、これも私の人生…だと素直に受け入れるゆとりが出てきます。
この物事が起こる前と、今では全く違う人生観、世界観にたどり着きます。
全てを神や宇宙に委ねて自分を解放してあげるのですね。
気持ちが安らぎ落ち着いてきます。

【SARAモデル】

スタートは誰もS ショックからです。
そして、A 怒り、R 拒否の段階を行ったり来たり、行きつ戻りつを繰り返し、あるいは再びショックの状態に戻ったり…

でもいつか必ず4つ目のA 受容に行き着くのです。
どれぐらい時間がかかるかはその場合によりますが。

私の経験からいうと
そのアップダウンを乗り切るには2つの大きな助け舟があります。

1.時、時間の流れ

何事も時が静かに癒してくれる。
私自身、長い入院の間、「日にち薬」という言葉を教えてもらいました。
何もできないけど、時が過ぎていくということはそれだけで大きな心の癒しになりました。

2.心ある仲間が寄り添ってくれること

何も言わずにただ静かにそばにいてくれる、そういう友の存在は大きいものです。
揺れ動く心をそのまま受け入れてそばにいてくれる、それだけで大きな安心を貰いました。

このSARAモデル、
あなたの人生で大切な存在を失ったときだけでなく、人生のさまざまな場面で助けになります。

例えばリストラで職がなくなったとき、愛する人が離れていったとき、信頼していた人に騙されたとき、大切な財産を失ったとき、いろいろなときに体験する心の推移です。

これを知っていると、自分が今どの状態にいるか把握でき、周囲と対応できます。
怒りや拒否の感情を出すことだって“安心して”できます。
またその最中にいる人に対しての理解と思いやりが深くなるのです。

悲しみの中にも希望の光が見えますように。

2025.5.14
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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