• 中野 裕弓

プリンセスゲーム

今日、私は私の目に何を見せてあげたいか?
今日、私は何を私の耳に聴かせてあげたいか?

考えてみたことありますか?

以前“プリンセスゲーム”というのを考案し、実際にトライしてみた愉快なエピソードを思い出しました。

アメリカで働いていた時、同僚にアンという名の秘書さんがいました。

彼女は仕事もプライベートも頑張っているシングルマザー。2人の手強い(?)ティーンエイジャーのお母さんでした。

仕事にも手を抜かず、教会活動も熱心で、いっぱいいっぱい頑張っている女性でしたが、経済的なことや将来の不安、子どもたちのことでいつも悩みの多い人生でした。
「Why me? なんで私ばっかりなの?」が口癖。

ある日、彼女が私にこんな質問を投げかけました。

「私はもっと幸せになりたくてこんなに努力しているのに一向に思い通りにならない。

キャリアアップのことも、経済的にも時間的にも心にも余裕がない。なぜ私はいつもそうなの。

ついてない人生だわ。どうしたらいいと思う?」

日頃のアンを見ていて、私は彼女の自分に対する扱い方がぞんざいなのが気になっていました。

自分はついてない、いつも割を食う、嫌なことばかり起きる…といつも愚痴っているのです。

そこでこんな提案をしました。

「アン、自分のことをもっと大切にすると周りが違って見えてくるかも。

そうだ、自分のことをもっと大切にするためにプリンセスになった気持ちで暮らしてみない?」と。

「あら、面白そう」
「それじゃあ私はこれからあなたのことを“プリンセスアン”て呼ぶわ」
すると、彼女は「じゃあ、あなたは“プリンセスロミ”ね」
2人は顔を見合わせて子どものように笑いました。

翌朝、彼女は私の部屋に来ると開いていたドアを優しくノックして「グッドモーニング、プリンセスロミ。How are you?」と書類をテーブルの上に丁寧に置いていきました。

今までは朝から不機嫌な顔をして部屋にずかずか入ってきて、机の上に書類をばさっと置いていったのに、です。

お互いにプリンセスと思って接すると相手にとても丁寧になるし、自分の自分に対する扱い方もとても優しくなっていきました。

プリンセスゲームを始めて数日後、私はあることに気づきました。

自分をプリンセスだと思っていると、今日1日私はプリンセスに何を見せてあげようか何を聞かせてあげようかととても注意を払うようになってきて、自分を本当のプリンセスのように扱い出していたことを。

こんなこともありました。
ある日、仕事から家に帰りキッチンに立った時、いつもは何気なく流しっぱなしにしているテレビの内容がとても気になりました。

それは「犯罪24時」という地元警察のドキュメンタリー番組で麻薬の取り締まりや、交通違反、社会の困り事が続けて映されていました。

すると料理をしていた手が止まりました。「あら、プリンセスにはこんなバイオレントな番組は見せられないわ」と意識的にチャンネルを変えました。今までは内容など気にもならないただのルーティンだったのに、です。

言葉遣いも、所作もいつの間にか、意識してエレガントにふるまおうと思うようになっていました。

そして、
私は今日という日、自分の目に何を見せてあげて、どんな話を聞かせてあげたいのかを知らず知らずに意識していることにも気づきました。
何しろプリンセスをお預かりしている…なんて錯覚をしてきたから不思議です。

オフィスでも、私たち2人が朝からご機嫌なのに、同僚たちは何か気づいたようでした。

ところが、しばらく経った朝、アンが魔法から覚めたような面持ちで、以前の暗い顔をして部屋に現れました。

「私、プリンセスゲームなんかやめるわ。もともとプリンセスって高慢チキで自分勝手というイメージがあって気に入らなかったのよ」なんて文句を並べだしました。

こんな子どもだましなことをやってみても現実は何も変わらない、だから無駄だと思ったそうです。
私はもう少しやってみない?と話しましたが、残念なことに彼女のプリンセスゲームはそこでおしまいになりました。

今頃、彼女はどうしているかしら?

“大脳は騙せる”
ということ、ご存知でしたか?

ふと、その言葉が頭をよぎりました。本当に自分のことをプリンセスと思って扱っていたら、いつの間にか大脳は私の想いに引っ張られ本当にその気になってくるのです。

これは心理学でも証明されているのだそうです。自ら屈託なくそう思うことによって、自分の脳はすっかりその気になってしまうというのです。
つまり、大脳は現実バーチャルリアリティー(仮想現実)の区別がつかないというのです。あー愉快!

それまで
とはとても賢くて、現実認識が高い。だから決して自分の思惑などに影響されるはずなんかない、と思っていましたから。

自分のことをプリンセスだと思い、丁寧に扱うようになっていると、大脳はほんとにその気になってくるから不思議です。

アンは残念なことに途中でリタイアしてしまったけれど、私と私の大脳は二人三脚、自分のことをプリンセスだと思って丁寧に扱うと気分が良いのです。それ以来、プリンセスゲームは今でも続いているのです。

このプリンセスゲームは、高価なものを身に付けたり、高級な場所に出入りしたり、セレブのように生きる、そんな事は必要ありません。

どこにいても、何をしていても、常に自分はプリンセス、と勝手に思い込んでいる、それだけなんです。
当然、今もよく話題に上る“自己肯定感”もアップです。
いつもFeel Goodでいられます。

おまけに、
自分を丁寧に大切にしていると、周りの人が自分のことを同じように丁寧に大切に扱ってくれることも分かりました。

すべては自分の想いから始まるのですね。

あなたもプリンセスゲーム、やってみませんか。大脳との新しい二人三脚、見える世界が違ってきますよ。
お楽しみに〜

2023.8.31
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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