みなさま、こんにちは!
ドクターリセラをこよなく愛するフリーアナウンサーの魚住りえです。
私は新刊の著者さんにインタビュー&対談の連載をもっているのですが、最近自分の中でスマッシュヒットだった本がありました。
橋本幸士先生が書かれた「物理学者のすごい日常」という本です。
橋本さんは、大阪育ち、京都大学で理学博士を取得後、京都大学大学院理学研究科教授というすごい先生。
しかも文系の私にとっては「宇宙人」のカテゴリーにいるような方です。
「私には縁のない遠い人」のようなイメージでした。
しかしベストセラーになっているとのことで(タイトルを見ても、なんとなく敬遠してしまいましたが)、手に取って読んでみました。
するとどうでしょう。
めちゃくちゃ面白い!!
なにが面白いかといったら、タイトル通り、頭の中が物理学でいっぱいの橋本さんは、日常に起こる全て問題を「物理学の計算」によって解決しようとするのです。
例えば、突然の雨に降られた時、駅から職場まで傘を持たず、雨に濡れずに到達するには、どうしたら良いかをとっさに計算します。
雨に濡れないための歩く速度、身体の傾け方(角度)、適切な道順など、あらゆる物理の計算を駆使して、方法を編み出します。
そしていざ駅から飛び出してみると・・・、ずぶ濡れになります(笑)
人間の身体は棒ではなく、凹凸があるので、通り一遍の計算式ではあてはまらず、、、
結局、雨に濡れながら職場に行く、という日常。
また講演を聴いているとき、同じ机の端の人が貧乏揺すりを始めたために、机が小刻みに揺れてしまいます。
どうにもこの揺れが気になって講師の話が頭に入ってこない。
困った先生は、揺れの波を相殺するには、真逆のリズムの揺れを作れば治まる、という考えで、ご自身も貧乏揺すりをすれば良いと考えます。
しかし計算をすると、なんと1秒間に50回貧乏揺すりしなければならない結果に。
これは人間技ではない、どうしようかと逡巡しているうちに「ピタッ」と机の揺れがおさまります。
「あれ?」とその人の脚を見てみると、今度は貧乏揺すりから、左右に脚を開いたり閉じたりする動作に変わっていた・・・というオチ笑
実際にお会いしてみると、「THE理系」の方にありがちな(失礼!!)話がちんぷんかんな先生ではなく、むしろ会話上手、気遣い上手な方でした。
この本のなかで一番心を打ったのは「人は死んだらどうなるのか」という永遠のテーマに切り込んでいることです。
先生の最愛のお父上が亡くなったとき、この悲しみ、喪失感をどうすれば良いのか、物理学者としての考えを述べられていて、涙がこぼれそうになりました。
結論からいうと「最終的に、人は宇宙になる」そうです。
よく「お空に帰る」という表現をしますが、本当にそういうことが物理学の思考では正しいのですね。
読み終えた私は「物理学者は、実はロマンチストなのではありませんか?」とお伝えしたところ、「物理学が一番近いのは、実は文学なんですよ。想像力、感受性がなければ真理を追究することはできないのです。その方法が言葉ではなく、計算であるという違いなだけなんですよ。」
とのお答えでした。
100パーセント理系は、回り回って100パーセント文系になる・・・・
「ああ、だから先生はコミュニケーション上手なのかあ」
と腑に落ちました。
私は高校生の頃、テストで物理7点、国語90点、という全くバランスのとれていない学力でした。
しかし私は、意外と理屈っぽく、深く物事を考えないと納得しないという癖がありました。
生まれもった得意、不得意はあれど、結局、全て繋がっているのかもしれませんね。
是非!手に取って読んでいただきたい本です。