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  • 中野 裕弓

自分に読む弔辞

「終わり良ければすべてよし」
なんだかホッとするとても優しい言い回し。

その人の一生がどんな人生であったとしても、最後の場面で「あぁ、幸せ〜」と思えたら、なんと素晴らしいことだろうと思いました。

終わりが良ければ、今までの人生が有意義で、幸せなものだったと一瞬にして書き換えることができるのですね。

だから、人生の最後をしっかりイメージすることが大事だと思うに至りました。
これをきっかけに、私の終末ケアへの興味が増しました。

今は終活という言葉も、日常の会話の中でよく聞かれるようになりました。

みなさんは自分が地球を去るときのこと、考えたことはありますか?

以前、アメリカで終末期の方々へのカウンセリングの研修を受けました。
毎回、死とどう向き合うか、本人、ご家族、いろいろな角度からの擬似体験ワークショップを経て、私のに対する考え方もずいぶん影響を受けました。

帰国してから主催したワークショップの中でも、そこでのヒントを受けてこんなことを体験する場を設けました。

それは「自分の人生の卒業式」

つまり自身の葬儀をイメージしてみるのです。
正面にはあなたの微笑む写真が。
そしてその場にはあなたを大切に想う方々が集っています。

ワークショップに参加した皆さんの反応は様々。
お葬式という言葉がショックで呆然としてしまう人、誰かの旅立ちのことを思い出して泣き出してしまう人、葬儀なんて考えたこともないと思考がフリーズしてしまう人などなど。

次に弔辞を読んでもらう場面を想像します。

●そこではどんなことを語ってほしいですか?

● そして弔辞を誰に読んでもらいたいですか?

冷静になって、そのシーンをイメージしてみると、感情の奥にある自分の人生を総括する気持ちも見えてきます。

私は大切な心友Mさんに弔辞を読んでもらいたいと思っています。
読んでほしい弔辞の内容はとてもシンプル。
「ロミさんと出逢って私の人生はますます面白くなりました
これだけで充分です。

人生の豊かさは、旅の途中で出会った人とのご縁によって倍増します。
共に時を重ねるとお互いの人生がますます充実したものになると実感しています。

気づいたのは、私は「ロミさんのおかげで…」と言われることより出会ったことによって、「ますます自分の人生が面白くなった…」と語ってもらいたいということ。

そこには出会った人同士の対等な関係を楽しみたいという思いと、人生は愉快に楽しく過ごしたい、それを実践したいという思いが浮き彫りになった気がします。

みんなで順番に自分の思いを語っているうちに、どんどん思いが変化してきます。

当初は「弔辞はもちろん配偶者に読んでもらいたい」と言っていた方が、「夫は私が看取りたい。だから長生きして、私の弔辞は子供か親友に読んでもらいたい」と変えた人もいました。

家族のために人生を捧げた人」
「病と共にありながら、感謝の思いを教えてくれた人」
人の役に立つことを何よりも大事に考えていた人」
未知の世界を研究することに命を燃やした人」
「料理で、人を癒すことができる人だった」
「何があっても、笑顔を絶やさない人だった…」
「何事も勇気を出して、果敢に挑戦する人だった」
「人生を最後まで愉しみ味わい尽くした人

なるほど、私はこの人生を卒業する時こういう風に人に思われていたいんだと客観的に眺めてみたらなんだかスッキリしました。

人生の最後にそう思うなら、今日からそれを中心に置いて人生を歩んでいくならブレがありませんね。

時間のある時、ゆっくりお茶でも飲みながら、どんな弔辞を、誰に読んでもらいたいかイメージしてみると残りの人生がより色鮮やかになってきますよ。

2024.2.8
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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