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  • 中野 裕弓

知る権利 VS 知らなくてもいい権利

「私って正直な人間なの。だから、これは言わずにはいられないから話すわね…」

こんな前置きでもたらされた話。
それにより気分を害したり、悲しくなったり、怒りが湧いてきたり、意気消沈したりしたことはありませんか。

人には当然“知る権利”がありますね。

でも知らなくてもいい“知らないでいる権利”もあるのです。

話し手の独自の正義感に裏付けられた「正直さ」は、時によって相手を傷つけることにもなるのです。

こんな経験をしたことがあります。

友人が我が家に到着し玄関先でお迎えしていたところ、通りかかったご近所さんに会いました。

ちょっと立ち話をしたところ、私の友人とご近所さんは、息子さん同士が有名な名門進学校に通っていたことがわかりました。同学年ではなかったのですが近い学年だったことも。

まぁ、なんと偶然!
なかなか入れない名門校のOB同士とは世間は狭いわね、と驚きました。

数日後、そのご近所さんからお電話がありました。

「実は、先日いらしていたご友人のことなんだけど…」と話し始めました。

「私の仲良しの息子さんがその方の息子さんと同学年だったの。聞いてみたらあの奥様はなかなか難しい方なんですって。以前、問題もあったようで信頼できない方よ。お付き合いするなら気をつけないと大変…」

「???」

私は唖然としてしまいました。
続けて詳細を語ろうとしているご近所さんに待った!をかけて私はこう尋ねました。

「あのー、それって私が知る必要のあることなんでしょうか」

今度はお隣さんが絶句する番です。

ご自分の知りえた情報を私の為だと思って伝えてくれていたからです。ですからその情報に対して感謝されることはあっても、こういう反応が返ってくるとは思いもよらなかったのだと思います。

しばし沈黙の後、
「えー、だってね…今後あなたが困ったことにならないように、私は親切心からご注意したかっただけなの…」

何となく気まずい雰囲氣でその方はそそくさと電話を切りました。

こんなに面と向かってネガティブな情報をわざわざお伝えくださるというその方の電話の趣旨に私も大いに戸惑いました。

とても良い友好関係にある私の友人のネガティブな噂ばなしをわざわざ私の耳に入れなければいけないと思ったご近所さんのことを考えました。

彼女の正義感と親切心でこういう忠告をせざるをえなかったのでしょう。今まで多分ずっとそういうスタンスで来たのだろうなぁと思いました。

そして今まで、忠告した相手から感謝されることも多かったと思います。

でも、
私が特に聞いてもいないのに、第三者の方の人となりを私の耳に流し込む必要があったのでしょうか。

私たちは知らず知らずのうちにこうやって人の知らなくてもよい権利を奪っていることは無いでしょうか。

また親が自分の価値観に基づいて子どもの行動や付き合ってる友達について良し悪しを裁き厳しい意見をいうこと。こういうことも巷でよく耳にしますよね。これで悩んでいる子どもたちもいることでしょう。

良かれと思って自分の価値観を押し付けたり、言わなくてもよいこと、必要のないことを人の耳に入れること、そこに注意を向けてみる必要がありそうです。

もしかしたらそれでせっかく良い友情を育もうと思っていた関係性が壊れることだってあるのです。

「知らぬが花」
という言葉があります。
こんな解説がありました。

「知らぬが花」は知らないでいる方がいい、という意味です。知ってしまうと不愉快なことになる、怖い思いをしてしまうから真実を知らない方が幸せなことを指します。あるいは、露骨に言ってしまうと身もふたもないので、それなら言葉にしない方がかえって好ましいという意味でも用いられることがあります。

私たちは主に言葉を使ってコミニュケーションをとる生き物です。

毎日使っている言葉、
それをアップデートして、少しでも
愛のある言葉」の使い手になりたいと思います。

2022.12.15
Romi

SNSSHARE

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COLUMNIST
中野 裕弓
人事コンサルタント
ソーシャルファシリテーター
中野 裕弓
HIROMI NAKANO
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19歳で語学研修のためロンドンに渡り、その後9年に及ぶ英国生活を経て、
東京の外資系銀行、金融機関にて人事、研修などに携わる。

1993年、ワシントンD.Cにある世界銀行本部から、日本人初の人事マネージャー、人事カウンセラーとしてヘッドハントされ世界中から集まったスタッフのキャリアや対人関係のアドバイスに当たる。

現在は一人ひとりの幸福度を上げるソーシャルリース(社会をつなぐ環)という構想のもと、企業人事コンサルティング、カウンセリング、講演、執筆に従事。 また2001年に世界銀行の元同僚から受けとったメッセージを訳して発信したものが、後に「世界がもしも100人の村だったら」の元となったため、原本の訳者としても知られる。

「自分を愛する習慣」をはじめ、幸せに生きるためのアドバイスブックや自分磨きの極意集、コミュニケーションスキルアップの本など著書多数。

2014年の夏、多忙なスケジュールの中、脳卒中で倒れ5ヶ月の入院生活を経験する。
現在はリハビリ療養の中で新しいライフスタイルを模索中。脳卒中で倒れたことが人生をますます豊かで幸せなものにしてくれたと語る。

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