~カサブランカ~
馥郁(ふくいく)たるカサブランカの香りが、我家の和室に漂っている。
帝国ホテル(大阪)で、2日間にわたり開催された講習会、全国大会。
朝会場に入ると、カサブランカの香りが漂っていた。
帰りに一束いただき、その香りが私に心地よい感情をもたらしている。
ある特定の香りから、それにまつわる過去の記憶が呼び覚まされる心理現象プルースト効果。フランスの文豪マルセル・プルーストから名づけられた。
今流行の ♪ ドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ~♪ この感じ。
多くの感動と学び、感謝で溢れる時間を共にした高貴な余香である。
五感の中でも嗅覚だけは本能の脳に直結し、香りにより過去を思い出すと言うよりも、その時の感情が甦る。
23年前の11月、一日中香っていたブーケから私とカサブランカとの関係が始まった。
この香りを嗅ぐと、寛容でどこか懐かしい気持ちにさせてくれる。
舞台裏下手は、カサブランカの香りに溢れていた。
時折タイムスリップする感覚に包まれながら、出番前の緊張の時間を過ごしていた。
~マッサージオイル~
呼吸やリラックス効果などに関係する、胸の間にある膻中(だんちゅう)と言うツボ。
5回押してお客様と呼吸感を合わせることから始まるリフティング術がアカデミーにある。
香りを吸い込みながら筋肉がほぐれ易い状態へ、5カウントで招待する。
香りの記憶で技術者も受けた人も、自信と喜びが溢れ出す。
そんなマッサージオイルが欲しいと考えたのは7年前の秋。
乾かず滑り過ぎず、
肌にやさしく温かく、
美肌効果も高くて、
そして記憶に残る高貴な香り。
もちろん全てナチュラル素材でと、頭に描くままの要望を伝えた。
手前みそながら、“奇跡のバーム”が誕生した。
ほとばしると言うよりは、煮えたぎるような情熱をもって完成させて行ったリフティング術は、6年の時を経て、言い尽くせない程多くの方々のお力で、今も進化を続けている。
講習室の静寂の中に流れる、エステティシャンの先生方の物凄い気迫と集中力。
手順や理論云々などを超越した、一つの芸術が創り出されていると感じる瞬間がある。
想いを込めて完成させた技術が、エステティシャンの先生方によって魂が入れられ、
生き物となっていく。
畏敬の念のような、深い感謝と不思議な感動に包まれる。
無我夢中になっていなかったら不安に押し潰されそうだった開講初期の頃に
ある先生が、
「効果を出せる喜び、
お客様の喜び、
エステティシャンとしての自信の喜び、
この技術には3つの喜びがある」と言ってくださった。
歓天喜地たる香煙が立ち昇った。
夜、自宅でラインメイクバームを肌に伸ばすと、突如そんな不思議で心地よい感覚に包まれる時がある。
タルミを引き上げようと必死になってマッサージする時よりも、香りとともに心の記憶を往来する翌日は、美肌効果が高いような気がする。
玄関先で育てているゆずが色づき始めた。
冬の記憶の気配が近づいている。
Recella Academy藤川知子
京都府宇治市の自宅にて。
2020年10月19日